卒論でゾラの『獣人』を取り扱ったこともあり、その頃からゾラの『ルーゴン・マッカール叢書』をいつかは全部読んでみたいなぁと思ったまま卒業し、社会人になってはや数年。
なんとか『ボヌール・デ・ダム百貨店』を読む事ができた。
解説を抜くと634ページ。クッソ長いが、飽きる事なく最期まで読み進める事ができた。久しぶりに読書するために夜更かしした。いつ以来だろう。
いやいや、ルーゴンマッカール叢書全部なんて絶対無理ですわ、でもゾラはチェックしておきたいんだよなぁ〜 できれば『居酒屋』か『ナナ』以外で。
と斜に構えてるあなた! ぜひ、これを読んでみてはどうでしょうか。
クッソ長いけど絶対面白い。
やっぱり『おしん』や『チャングムの誓い』的な王道展開は燃える
「いやぁ、生活が苦しかったらいつでもパリに出てきておいで って言ったけどさぁ、そういう社交辞令真に受けるやついないでしょ……」
と叔父に言われるところから始まるこの大河ドラマ。
叔父のライバル企業であるデパートに単身飛び込み、女関係でいつも失敗し金をたかりにくるクソ弟に稼ぎを全部持っていかれる上に、また同僚にはいびられる……仕事で才能を開花させていく王道展開ではあるけれども、やっぱり王道は気持ちがいいよね。
(主人公ドゥニーズを助けるかと思いきやあんまり活躍せず終わったドロッシュくんは忘れよう)
アニメ化しても絶対面白いと思うんだよなぁ。京アニとフランスのそういう会社が組んでどうっすか?
二項対立の美しさがいくつも重なる贅沢
この物語がとっつきやすい大きな理由は、他の人も言ってると思うけど、我々にもなじみ深いテーマであるイオンVS商店街を19世紀フランスでもやっているってところだろうか。
凋落していく昔ながらの経営、場の空気だったり、因習と伝統だったり、職人気質だったりっていうのが100年前でも同じ事が起こっている。それを21世紀の我々も肌身を持って感じる事ができているってのはなかなかないと思う。
ボヌール百貨店の改装オープンの描写、贅沢にページを使っていて読んでいても上流階級の夫人たちがその身を滅ぼすまでデパートにハマっていく様子は美しすぎて、なんならもっと描写してくれ!! って感じなんだけど、そのきらびやかさが輝きを増すほど、起死回生をかけて百貨店に挑んでいった人たちの悲惨すぎる退路が胸に痛い。
単に値下げ合戦で負けて破産するぐらいだったらいいほうで、特に叔父の家族が百貨店によって完全に破壊されてしまうのが辛いし、それでいて助け舟には絶対に乗らないプライドの重さが更に身を沈めていく感じね。
この小説には全く宗教的な話題が出ないのだけれど、この物欲、消費社会に支配されていく世の中が最期に見せるボーデュ家の母娘の葬式のシーンで個人商店の面々が集結し、見せつけるかのようにするわけだけども、その陰鬱としたイメージが物質社会からみた宗教のイメージに重なるんじゃないだろうか。
その姿の生々しさは読んでいてゾクゾクすると思う。
ドゥニーズと恋敵(たち?)の対比もまた読んでいて面白い。
特にアンリエットが自分の屋敷にドゥニーズを呼びつけ、ムーレの前で恥をかかせようとして大失敗に終わるシーンはそれまでの耐えてきた色々なものがついに実を結んだシーンだよね。アンリエット本人も失敗した〜〜 って言ってたけど笑
イメージでは超絶イケメンのユタンももう少し大暴れ、それはボヌールの中だったり、ドゥニーズ個人に対しても影響を見せるかと思ったんだけど、想像していたよりも活躍しなかったな。
新潮文庫よ、君はなぜ、文庫を出さなかったのか?
これ、新潮文庫あたりで上下巻で出して、もっと万人が手に取りやすいような形だったら、小説としても十二分に面白いのだから、もっとゾラの作品を日本に広く知ってもらうことできたんじゃないだろうか? とも思ってしまう。
(てか、新潮はいい加減『ナナ』を古い文体のまま放置しないでほしい。あれ、すげー読みにくかったゾ)
てかこの物語、『ごった煮』の続きだったのね。
次は『ごった煮』読みます。
担当:夫
ボヌール・デ・ダム百貨店―デパートの誕生 (ゾラ・セレクション)
- 作者: エミールゾラ,´Emile Zola,吉田典子
- 出版社/メーカー: 藤原書店
- 発売日: 2004/02/01
- メディア: 単行本
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前日譚でもある『ごった煮』も読みました。
こっちもこっちで面白いです・・・!