コミカライズされた
『本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜』
第一部と第二部の1巻を読みました。
異世界転生ものって、「スキル」を活かして次の人生で無双するってものが多い中、これに関しては決してそういうわけではない話だったので、かなり楽しく読めました。
かーなーり、おすすめです。
以下、ちょっとネタバレありです。
本好きの下剋上?司書になるためには手段を選んでいられません?第一部「本がないなら作ればいい!1」 本好きの下剋上(コミック) (コロナ・コミックス)
- 作者: 鈴華,香月美夜
- 出版社/メーカー: TOブックス
- 発売日: 2015/12/18
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る
世界観について
『本好きの下克上』は「異世界で本を読む」というゴールが既に提示されているため、
どうやってそこにたどり着くのか? という試行錯誤を十分に楽しむことができる作品です。
ゴールが提示されているというのは、
例えば『ドラクエ1』の対岸のりゅうおうの城や『ポケットモンスター赤・緑』のチャンピオンロードに22ばんどうろのように
終着地点がわかっているからこそ、物語にハマれる
という作品の仕組みであって、個人的にはこれが結構好きです。
いつかあそこにたどり着けるはずだろう、というのがわかっているのは物語の本筋を失わずに読むことができるということだと思うので、自分も創作活動するときは結構使ったりします。
そんでもって、物語の舞台も、少しずつ広がっていくのが丁寧ですね。
まずは自分の家、そして近所の森、父親の勤め先のある街、その街に内在する貴族たちの区画、そして、異国と
「あ、きっとこの後ここが舞台になっていくんだろうな」ってのがちゃんと前のフェーズで示されているのもいいです。
丁寧な人物描写
また、主人公は社会人から幼女(年齢的には未就学児)に転生してしまうため、知識はあれど体力的・年齢的に行動が制限されるので色々と思うようにいかない、というのがまた面白い。
もはや皆が思っているテンプレ批判のような形になってしまいますが、
「すげえ知識・パワー持ってるぜ!」→「すごい!抱いて!」となりがちな異世界ものの中においては、
転生先の家族や友人と協力して難題を攻略していくというのも面白いなと思います。
主人公の幼女は異世界では異世界の家族がいなければ生活できないわけで、つい主人公が頂点になりがちな展開が多い中、しっかりと家族や友人にフォーカスが当たるようになっているのも素敵です。
(余談ですけど、ちびっこに(当然)転生して、転生前の魔法で一気に大人に成長するっていうテンプレもあるよね。あれは素直にすごいと思った)
転生後の父親が、主人公が不治の病だと知った時
夜、人知れず流す場面がありますが、これも人物が丁寧に描かれているからこそかな、なんて思います。
転生前の知識はどう生かされるべきなのか?
実際に異文化でどうやって自分の知識を生活に取り入れていくのか、
というのは『信長のシェフ』もそうですけど、似たようなモノはないだろうか…というところに加えて、+αで異世界のモノを使ってよいものを生み出していくという展開は、これはこれで逆にベタなのかもしれませんが、やはり面白いですね。
「商売」の仕組みが物語で触れられているのも、作中で目立ちます。
主人公が敏腕商人のベンノさんと一緒に活動していくわけですけども、主人公が自分で市場に介入し、大儲けするのではなく(多分こうやったほうがなろう的には面白いんでしょうけども笑)、このベンノさんを挟むことによって、物語としての主軸を見失わず、前に進めていける感じが好きです。異世界の文化を売って、経済を牛耳ることだって当然できる中で、あくまでも「司書になる」という夢をないがしろにしなくて済むので。
いくつかの文明で作られた記録媒体…パピルスだったり、粘土板だったり…を試した結果、日本の和紙にたどりつき、
さらにそこで異世界での厄介生物、増殖する植物(トロンベ)を有効利用できそうなフラグがビンビンたっていますが、そこはどうやって回収していくのかなというのも気になります。(私が今回読んだ中では特に言及はなかったので)
第二部で主人公の拠点が教会へと移動しますが、その移動も
「主人公は自分の持っている魔力が自分の器に収まりきらないと、限界がくると死んでしまう」
というしかけが、第二部への切り替えをシームレスに行われてるのもいいなって思います。
第三部と第二部が同時展開されていることについては、ファッ?! ってなりましたが、コミカライズするには時間が足りなすぎる(ので、漫画家を別の方にして、並行させる)というのもなんか斬新ですよね。
何かの原作ファンで、コミカライズを待ち望んでいる人にとっては、このコミカライズの出版の遅さというのは悩ましいものでしょうから、こういうのもアリなんだな~と。
ただし、私は最初からコミカライズ派となってしまったので、第三部は読めないな~と。 でも裏のあらすじでネタバレくらってしまったのが少し残念でしたが。
秋にはアニメ化もするということで、楽しみです。
ちょうどこの一部がアニメ化するのかな? といったところでしょうか。