オタク夫婦の「○○が好き」

20代オタク夫婦の語り場です。漫画・映画の感想がメイン。特撮と世界一初恋とBANANA FISHもアツい。そんな夫婦です。

アニメ『彼方のアストラ』見終わった感想 あるいは『銀河鉄道999』が乗せなかった者

なんかSF界隈でちょっとした論争も引き起こしている『彼方のアストラ』、2019年夏の覇権アニメだったと思います。

ちなみに漫画は読んでません。この話は以降作品のネタバレがちょっと含まれてるので、未読の人は読まないでね~

 

私自身は硬派なSFってほとんどノータッチです。『地球の長い午後』とか、『星を継ぐもの』、『惑星ソラリス』ぐらいは拾ってますけど。(多分この作品の羅列から門外漢なのがばれてると思いますが笑)

 

 

 

『彼方のアストラ』と『銀河鉄道999』

著者も論争の一環で、『銀河鉄道999』が好きだった~ってなことを言っていますが、僕はこの二つの作品から、

宇宙を旅するということは、自己を見つめなおすことである。

という共通テーマを感じ取りました。

 

結局のところ、ほかの惑星を旅するなんてことはいまだかつて誰もやったことがないわけで、驚きメインで攻める『ガリバー旅行記』化するか、旅を通して内面を描き出す『銀河鉄道999』化するしかないんじゃないでしょうか。

言わなくてもいいかもしれませんが、「だから後追いSFは意味がないんだ」とかそういうことは一切思ってないです。むしろ僕は『銀河鉄道999』が大好きなので、影響を宇宙旅×内面描写 の作品が今後も増えていったらいいなと、今回『彼方のアストラ』を見て思ってます。

 

宇宙という無の空間から返ってくるものは無そのものなのですから、むしろ作者の腕の見せ所だと思います。

星野哲郎メーテルと旅をする中で、色々な星で色々な境遇の人や環境にあい、己の生き方についてを考え、見つめ続けたように、アストラ号クルーのみんなも、クルー同士でその見つめあう視線を反響させたことでより深くまで、自らの出生の秘密を受け止めながらも前へ進めたのかなと。

どちらも旅を通して、他者を通じて自身が成長していく、その背景に宇宙が使われているって感じでしょうか。

 

んでこっからが今日ちょっと饒舌な自分が語りたいことなんですが、

70年代末に発表された『999』と、10年代中盤に発表された『アストラ』の一番違うところは

そこに社会風刺があるか否かではないでしょうか。

核戦争、環境破壊、人種差別など(残念ながら旧世紀の遺物にできなかった)諸問題を『999』は宇宙という舞台を用いて描き、それに対して著者は哲郎を通じて読者にどう考えるべきなのか投げかけてくれます。

もちろん”あの頃”と違って、社会風刺なんていうモノが流行らないのは当然ですが、

前者を起点とするならば、前に戦争はあったけど世界統一政府もできて超平和だよから始まり、クローン法や宇宙移民とその事実の隠蔽というあくまでも想像の出来事を背景にぶっこんで、完全に宇宙旅ものから風刺臭を取っ払ってるってとこでしょうか。

 

ここが『銀河鉄道999』と『彼方のアストラ』の圧倒的な違いです。

さらに、あくまでも『アストラ』は私(たち)ともう一人の私(たち)を主軸とするための仕掛けとして、ほかの惑星の知的生命体の類が一切出てきません。

研ぎ澄まされた無の頂点である宇宙空間という仕掛けを使って、クルーの人間性を短いながらも見事に描き切っているところに燃えます。偽りにせよ「本当の平和」を体感したことのない私たちにとっては、クルーの目から見ても世界を自己のものとして消化しきることは不可能です。

 

そういった点では、『惑星ソラリス』とも共通点はありそうです。『ソラリス』は完全なる他者と向き合った時の人類がテーマでしたけど、無の環境でクローンである無の自分自身と向き合うことは、10年代という時代のなせることなのかなぁ。

 

今の私たちはネットで世界のあらゆる出来事を知ったつもりになっていても、その正体はTwitterの小さなタイムラインやLINEのトークルームだったりするわけです。ビックバンで広がった宇宙が今度は縮小へ向かっていくのと同じですかね?

その世界の大きさとアンバランスな自己の悩みが宇宙とクルーを通して『アストラ』では表現されています。

 

 

小難しく言いましたけど、平たく言いなおせば、「宇宙空間ではやることねえから考えることは自分のことしかねえんだよ」というところですかねぇ。

 

『999』に乗る哲郎は、メーテルがいてもそれは完全なる他者としての存在なので、基本的には孤独でした。その星々でできた友人とも、必ず別れが来ます。

その孤独を、異星人やメーテルを通じて見つめることで大人になっていきました。 

 

アストラ号に乗ったクルーには、五か月間ともに成長しあうことで、大人になっていきます。クローンである彼らにとってはクルーが家族であり、また自分自身そのものであると言えそうです。(俺の右手になれ! あたりがそういうのを感じさせますよね)

 

なんかうまいことおさまりがつかなくなってしまいましたので、このあたりで。

とにかく、『彼方のアストラ』たいへん面白い作品でした。

久しぶりに毎週楽しみにできたアニメでした。ありがとうございました。

 

 

 

 

銀河鉄道999

銀河鉄道999

 

 あっ、ちなみにここで触れてる『銀河鉄道999』は漫画原作及びアニメ版なのであしからず。