久しぶりの寅さんです。
本当は13作目も見てたんですが、感想書きませんでした。
12作目「私の寅さん」の見どころは、なんといってもとらやのみんなが旅行に行って、寅さんが留守番をするという逆転シーン。
いつもは好き勝手やってる寅さんも、とらやに誰もいないと源公やタコ社長が付き合ってくれててもおセンチになってしまい、「まだ電話がない!」と旅先のさくらにプリプリ怒る始末。
でも寅さんの気持ち、よくわかります。
私も学生時代は隙あらば鉄道旅行に行っていましたが、やっぱり「おかえり」を言ってくれる家族がいるからこそ、いけたと思っています。
日本全国を回って盆暮れの2回に故郷に戻ってくる寅さんもとらやでは飄々とやっていますが、旅先ではいくつもの悔やむことや悔しいことがあったと思うんですよね。
そういうのをいったんリセットしに帰ってこられる故郷というのは代えがたいものだろうなぁと、今作を見て思いました。
旅行を切り上げさせてしまった寅さんが照れ隠しでお風呂沸かしてる前半のラスト、シリーズ屈指の名シーンじゃないかなと思ってます。
前半の話とマドンナ登場の件はぶつ切り状態なので、ちょっともったいなさもあるんですが、まぁ、細かいことは気にしないということで…笑
寅さんは持たざるモノへの敬意と畏怖、2つの感情がいつも渦巻いていて、学者や勤め人にその傾向が顕著に表れますが、芸術家にも同じような感じですね。
その場かぎりのテキ屋稼業ではたどり着けない永続性が芸術家には特にありますから、寅さんがガッと言ってしまうこともわかります。
だからこそりつ子の「パトロン」になれたかと思った(その永遠性を享受できるようになった)寅さんが、りつ子にフラれてしまい、柴又を去る姿が余計に悲しく見えます。
そんなちょっと悲しい終わり方だけれども、ラストシーンでは絵の啖呵売。
そこには非売品の寅さんの絵。
この絵がいいですよね。留まらない寅さんが、留まっている絵。
永遠性に触れられた寅さんの伸びやかな声で終劇、になるのがまたいいんだよなぁ~。