漫画雑誌「青騎士」で連載中の
岸本七子先生/『煙の向こうに声が聞こえる』1巻 感想です。
よく行く本屋の最新刊コーナーの棚の一番上に置いてあって、
なんだか面白そうだなぁと思って買ってみました。
地元の温泉街・湯河原で便利屋を営む青年、門野充。彼の秘密、それは
「タバコを吸っている時だけ、相手の心の声が聞こえる』ということ。
(帯より引用)
引用するにあたって帯をじっくり見て「あ、これ湯河原だったのか」って思いました。
(坂が多いから、三浦半島だと思ってた)
以下、感想です。
ネタバレなしのオススメ記事。
喫茶店にあってほしい本
この漫画をなんて紹介したらいいだろうか、と読み終わって考えたのですが、
喫茶店にあってほしい本ですね。
この漫画は心の声が聞こえるからといっても、主人公がその能力を駆使してお悩みや事件を積極的に解決していく作品ではありません。
愛煙家には悪いですけど、今は下手したら喫煙所で吸っていても嫌な顔される時代。
作中にも煙草を吸われてちょっと煙たくされている場面があったり。
心の声が聞こえるのは、やたらめったら吸わない煙草が煙を漂わせる、わずかな時だけ。
その一瞬で垣間見える相手の心情っていうのが、また主人公、充のやるせなさを増幅させます。
1巻掲載の話は登場人物の顔見せであって、基本はハッピーエンドで終わる話が多いので、さくっと読めます。
そんな今作をなぜ喫茶店で読みたいかというと、二つの要素がありまして……
喫茶店には概念的なタバコがあってほしい
私もタバコを吸わないし、喫煙OKの店は選ばないんですけど、
喫茶店にはタバコがあってほしい とは思いませんか。
私にとって喫茶店はおいしいコーヒーや紅茶、軽食にデザートをたしなむところではあると同時に
非日常を味わう空間でもあります。
そういうところで日常には表れないタバコがいてほしい、とも思うわけです。
(まぁ、実際には臭いからやめてほしいんだけど)
その自身の中になる、タバコに対する乙女心みたいなものが
この漫画ではうまく昇華させてくれている感じがしますね。
すれ違う他人のことが気になる
喫茶店で周りのテーブルの人がどんな話をしているのかな、って気になることありませんか。
なんか契約書書いてるなとか、この二人はどんな関係なんだろうとか。一人で来てるのかなとか。
同じ喫茶店で一瞬だけ交わす最も薄い関係性。
主人公:充の人間関係は便利屋をやっているということもあって広いのですが、
同時にたまに心の声が聞こえてしまうということもあり、(そして、まだ描かれていない何かがあって)かなり人との距離を取っていると感じます。
その距離感が私を喫茶店にいるような雰囲気にさせてくれますね。
好きなワンシーン
まー、聞いたところで
別に
他人をコントロールできるわけじゃないし
なんも変わんないって
(100,101頁より。他人の声が聞こえるとはどういう感じか? という問いに対して)
そう、この漫画のいいところは
心の声が聞こえるという能力に対して、既に主人公:充は一周回って達観しているところから始まっています。
多くの無力感と、少しの希望が混じったまま物語が進行していくところです。
そこに私は自身の張っていた力が緩まったような雰囲気を見出しました。
そういうこともあって、喫茶店にあってほしい、なんて思うのかも。
