原作も読んだことあるし、主演の山田杏奈さんが好みのタイプで、スズキ・スイフトのCMをいつもじっくり見てしまう人だったので、思い切って観に行きました。
正直な話、あんまり期待せずに…だったのですが、すいません、撤回します。
めちゃくちゃ面白かった。
そして心の中になんか茶黒いモゾモゾを残らせる映画でした。
カップルで見に来てる人いたけど、これデートで観る映画ではない…笑
以下、ネタバレありの感想
Wヒロインの演技がすごい
山田杏奈さんのイメージって私の中では若い!元気!後輩キャラ!(←これはCMの影響)ってところだったんで、主人公、愛の目が透き通ってない演技にゾクゾクしてしまいました。
ほんと、「目」がすごいんですよ。
くりりとした目が特徴の女優さん、目を武器にここまでやれちゃいますか、と。
そして、美雪役の芋生悠さん
こちらはお初の女優さんだったんですが、いや~やばいっす。
地味な女の子が愛の手に堕ちていくあの妖艶さ…
「文化祭に向けて、坂道シリーズのダンスをセンターで踊るような女の子」
冒頭のシーンだけで主人公の愛が世の中でどんなポジションにいるかがわかってしまう名シーン。
センター張れるぐらいの女の子だから才色兼備なんすよね。
最初はなんだこのシーンは!って思ったんですけど、2回目の練習のシーンでハッとさせられました。
ただ機嫌が悪くなってるだけじゃない、「あぁ、木村愛がここまで堕ちてしまったのか」と目の当たりにさせられる意味のある描写だったんだ…と。
美雪の部屋
愛が美雪にキスを迫り、押し倒す…その直後母に呼ばれた美雪が部屋を出て、何事もなかったかのようにふるまう。
この後の
「あんなことがあっても親の前では娘に戻るんだね」と笑う愛に対して、
「お母さんのことが好きだから」と返す美雪。
このシーンめっちゃ好き。
濡れ場もすごかったですよね。その描写はもちろんのこと、時間をかけて手を洗う愛のあの目、あの目なんすよ。
後、語りたいこと
原作を読んだとき、私は「暴走する承認欲求の成れの果て」がこの作品のテーマだと思っていて、原作を読んだのももうかなり昔ですから、愛が美雪を奪う、というところとその「承認欲求」というところしか話は覚えていなかったんですが、
この作品は「承認欲求」についてはあまりクローズアップされてなかったよな? と思います。
そもそも、本当にたとえ君のことを愛ちゃんは好きだったんですかね?
この感じ、夏目漱石の『こころ』で「私」は本当に「お嬢さん」が好きだったのか問題と似たところあると思うんですが、
「ひらいて」の主人公は別に美雪に対しての感情はゼロスタートだし、常にフェイクですよね。
『こころ』問題はKの死だとか、作品そのものの古さでマスキングされている感がありますが、
今作の「たとえ君のことが本当に好きなのか?」・「たとえ君を手に入れるためにどこまで愛ちゃんはやれるのか」
は明確な答えが準備されていない分、うまく呑み込めない「何か」が映画館を出た後にも腹の中にずっと気配が残ってるんですよね。
成績もよくて、明るくて目立つタイプの愛(山田杏奈)は、同じクラスの“たとえ”(作間龍斗)にずっと片思いをしている。 ひっそりとした佇まいで寡黙なタイプだけど、聡明さと、どことなく謎めいた影を持つたとえの魅力は、 愛だけが知っていた。
(公式サイト・Introduction & Storyより)
とあるんですけど、片思い本当にしてたかってマジでわかんないですよ。
てかそんな描写あったか…? と。
そりゃ、愛ちゃんの口から「1年生の時からずっと気になってた」みたいな台詞は劇中にありましたけど、その前にたとえ君が「お前嘘ついてるだろ」って言っててその気持ちが嘘であることを示唆しています。
最初に言った「承認欲求」の話がないような気がする、ということも含めて、
それは作品の描写不足ではなくて、あえて映画の中で描写しなかったことで愛ちゃんの不気味さを色濃く描写したんじゃないかと思うわけです。
…首藤凜監督すごい。