オタク夫婦の「○○が好き」

30代オタク夫婦の語り場です。漫画・映画の感想がメイン。特撮と世界一初恋とBANANA FISHもアツい。そんな夫婦です。

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映画『キネマの神様』感想 松竹映画100周年の名作

大学の後輩から「キネマの神様面白かったですよ」というLINEを急にもらったので、彼がそう言うなら、ということで早速観てきました。

 

劇場はほぼ満席。平日の昼間に行ったので、当然観客はおじいちゃんおばあちゃんばっかり。たぶん、『男はつらいよ』をリアタイ視聴してた連中だな…と思うと羨ましい限り。

 

感想を書くにあたってHP等を見て、この映画が最初志村けん主演で作られてたことを知りました。

確かに作中で一か所「なんでこのタイミングでこれが?!」ってのがあったんですよね。あれは志村けんがこの映画に関わっていたんだぞ、というのをエンドロールだけではない、彼へのリスペクトだったのだなと今になって思った次第。

 

 

つらつらと感想を書いていきます。

一応、ネタバレあり。

 

 

 

 

 

閉塞感漂う現実を打破するのは過去か未来か

アルコール・ギャンブル依存症で借金取りが家に来るほどに家族に迷惑をかけまくっている主人公ゴウ(沢田研二)、仕事の契約が切られてしまった娘、引きこもりがちの孫(でも働いてはいるっぽいな)、おろおろすることしかできず、娘からも詰められる妻。

「酒とギャンブルの代わりに、お父さんが昔から大好きだった映画を観まくったらいいじゃない!」ということで昔馴染みがやっているミニシアターへ。

そこで流れる映画を観て主人公は「あの女優の瞳には俺が映ってるんや…」とつぶやく…

 

冒頭はこんな感じですかね。

この家族、家庭としての閉塞感、もうまさにコロナ禍における今の私たちですよね。

息はつまりそうだけどなんとかやってる、でも悪い方向に進んでるのは間違いない。

 

過去

映画は過去編、主人公のゴウが松竹で助監督として映画を撮っていた古き良き時代へ。

過去編が始まるまではゴウのだめだめっぷりを「ひゑ~」って気持ちで観させられるわけですが、そのタメがあったからこそこの過去編のきらびやかさがよりまぶしい。

 

そう、過去編がすげえおもしろいんですよ。

ゴウも含め、そこで働いてる人がみんな生き生きとしてる。出前のカツ丼はおいしいし、熱意をもって仕事に取組み、仕事が終われば撮影所の近所の食堂で飲み食いし、職場の人と親睦を深めながら明日も頑張ろうとやっていく…

 

この劇場で観てるシニアたちもこんな現役時代を過ごしてきたんだろうなぁと別のところに思いをはせたり。

 

「日が沈んだら撮れなくなる! 走って太陽に待ってもらうように行ってこい!」

「はい!」

なんてシーンがありましたが、こんなんもう令和じゃ再現不可能ですよね。

 

 

そして、過去編から現実への移動が「キネマの神様」の脚本というアイテムを通じてシームレスに行われるのが本当に良い。

さすが巨匠っす…

 

未来

ちゃんと映画として、主人公たちが現状を打破できる見込みが立ち、物語が終わったのは本当によかった。(借金はどう返したのか気になるところではあるけど)

父親が在りし日の活力を取り戻したことで、ゴウと妻、娘のこじれた関係の禊も終わり…

 

この作品の現実の時間の進み方(暗いところから明るい方向へ進む)のが望まれるべき私たちの未来だと仮定すると、人と人との縁をつなぎ続けていくことこそが、この閉塞感を打ち破る鍵なんだ、というのが私たちが受け取るべきメッセージでしょうか。

 

ラスト、ゴウは映画に魂を引き寄せられてそのまま死んでしまうわけですが、なんかこんなご時世だからかな、死なないで夢オチみたいに終わってもよかったんじゃないかなってちょっと思いました。

「何よお父さん、せっかく連れてきたのに寝ちゃって!」

「あれは夢か…よし、勇太! 帰って新作を考えるぞ! 緊急事態宣言がなんだ、外に出られなくたって映画は不滅なんだ!」

的な。

でも安っぽいな、自分で書いておいてなんだって話かもしれませんが笑

 

 

 

 

個人的に好きなシーン

・家出していたゴウが孫の勇太の部屋に庭から上がり込み、金を借りるために夢で見たお告げの話をするシーン

これすごい寅さんっぽくて萌えた。

 

・エンドロールで監督がお世話になってきた先輩や、映画を作ってきた先人にお礼のメッセージを入れてるところ

こういうのに弱い人なので。

 

余談:菅田将暉すごい

仮面ライダーW以降、菅田将暉が主演の作品ってほとんど観てなかったんですけど(『ごちそうさん』は杏より先に私が嫁いびりに耐えられなくなって観るの辞めた笑)、菅田将暉の気風の良さって「すごい」の一言に尽きちゃいますよね。

初監督映画で先輩に撮影方法に口を出されて逆切れしてそのまま会社を退職しちゃうゴウを観客に「さもありなん」と思わせてくれる感じ、菅田将暉じゃないと出せないよね。

どいつもこいつも菅田将暉をキャストしやがってよ~、なんて思ってましたが考えを改めました。

 

 

余談:原作との違い

映画を観終わった後、本屋によってちょこちょこ~っと原作本を読んだんですが、原作では孫の力によって映画ブロガーになったゴウと淑子がいろんな映画について語って人気になっていく、って感じっぽいですね。

映画ではコロナ禍の話になっていて、映画館が閉館してしまう原因も緊急事態宣言でしたが、小説では違う理由みたいです。(該当するページだけたまたま目に入っちゃったんですが、気になる人は買って読もう)

 

 

 

でも映画のほうが大衆向け(想定する視聴者層)がわかりやすいし、求められてると思うので、原作と映画で大幅にスジが異なっていてもこれはアリなのではなかろうか。

 

 

 

※併せて読んでね

 

pisuke9190.hatenablog.com