正直最初はあんまり興味なかったんです。
「あの花~」乗り遅れて結局見てないし、「ここさけ」も見てないので。
けれども、台風19号に公開初日をつぶされてこの名作が埋もれてしまうのは悲しいっていうどなたかからのツイートからの一連のつぶやきを見まして、そこまで言うんだったら見に行ってみようかな、と思い立ち、先日レイトショーで見てきました。
結論
アラサー世代は絶対見に行ったほうがいい。
以下ネタバレあり。
あの花現役世代こそ、見に行くべき
ここで「あの花現役世代」という言葉を定義することにすると、
「あの花自体を高校生という一個前ではあるが、もう戻れないという立場から見ていた人」
になるかと思います。
『あの花』が放送されていたのは2011年ですから、当時アニメを最も見ていた方々を大学生相当の年齢と仮定すると、こんかいの『空の青さを知る人よ』の主人公たちとほとんど変わらない世代になります。
2011年…ネット流行語大賞を見てみると、ACジャパンのCMや、まどマギが流行ってたあの頃です。(もう8年も経つのね)
物語的にはあの花と今作に直接的な関係はありません。(特に話題になってないから、小ネタとしてもないんじゃないかな?)
しかし、当然観客は秩父三部作の第一部として、あの花を思い出さないわけにはいかず、あれから8年経ったということを強烈に印象付けられると思います。
8年間、当時うすぼんやりとしか考えていなかった「社会」に痛めつけられ慣れてきたあの花現役世代。
「しんの」のように生まれ育った街から出た人もいれば、「あおい」のように出なかった選択をした人、いると思います。
ガンダーラの対極としての地元(秩父は田舎か問題)
ガンダーラ ゴダイゴ 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索
曲中で「自由なユートピア」と歌われているガンダーラ。
しんのやあおいが高校生の頃にバンドを組み、歌った曲、
そして、あかねも歌う曲。
秩父を出て、東京というガンダーラに向かったしんのと、同じ夢を追うあかね。
ここから出て、ビッグになりたい! ここから出たい! という深層心理が彼らにこの曲を歌わせていたのだと思います。
都会⇔地元(田舎)の論争は避けられないものですが、
でも、首都圏近郊にお住まいの方なら鑑賞中、ちょっと思ったんじゃないでしょうか?
「秩父っていうほど田舎か?」
実際、秩父に行くことはねんに1回あるかないかですけども、都心に出れば西武鉄道のCMや広告をバンバン見かけますし、実際鉄道で行っても1500円の90分でついちゃうんですよね、秩父。
なんだかんだ交通の便の良い埼玉県ですしね。
でも、「秩父は登場人物がいうほど田舎ではないのでこの物語はおかしい」
というわけではないと思います。
それは、ガンダーラが実際には黄金郷でないのと同じで、誰しもが一度は抱く「生まれ育った街から出ることで何かを変えることができる」という気持ちを持った若者を描いたら舞台が秩父であった
だけに過ぎません。
おそらく、吉祥寺や赤羽で生まれ育った人だって「ここではないどこか」へ行きたいという気持ちがあるでしょう。
故にこの物語は「自分のための物語」なのだと感じる人が多いのではないでしょうか。
自分に折り合いをつけて生きることとは
自分たちが高校生や大学生だったころに活動していたことを続けている人、スポーツや創作活動がぱっと思いつくかもしれませんが、皆さんの周りにはどのぐらいいます?
もちろん趣味としてやってる人は大勢いると思いますけど、夢を叶えた人っていても1人って感じじゃないでしょうか。
今作の「大人しんの」のように業界にいることはできても本望ではない形としてくすぶっている20代後半の自分と見つめあってる人もいるでしょう。
夢をおぼろげながらも見始めていた自分は今の自分を見てどう思うだろうか。
過去の1点から現在の自分の姿を見つめなおすというのは、成功していないと感じる人にとっては劇薬です。
EDでしんのはあおいと結婚します。=秩父に帰ってくることが示唆されています。
彼は夢を諦めてしまったのか? いや、そうではないでしょう。
彼は彼なりに自分に折り合いをつけて生きることを選んだのだと思います。
折り合いをつけるというとちょっとマイナスイメージがあると思いますけど、折り合いをつけることで見えてくる景色があるんじゃないでしょうか。
その景色だって絶対悪いものじゃないと思います。