秩父文学祭とは、秩父市・日本大学芸術学部・西武不動産の産官学共同で開催された文学祭です。
今年設立された秩父短編文学賞、その授賞式・朗読会を中心とした各種イベントが『秩父文学祭』として開催されました。
大賞受賞作は、俳優の梅津瑞樹さんに作品を朗読していただけるという超豪華な特典が。梅津さんは審査員にも名を連ねており、一次審査を通過すれば、自分の作品を読んでいただけるという超光栄な文学賞です。
第一回目の開催ということで、記念受験的に秩父短編文学賞に応募、
6/22に行われた授賞式・朗読会に参加してきましたので、
その雑感を綴っていきたいと思います。
なお、当然のことながら一次審査落ちです。
秩父×日芸×西武らしい文学賞
池袋駅から西武秩父駅まで、特急ラビューで最短77分で到着することから、
「77分のうちに読み終えられること」という設定で作品が募集されました。
規定の文字数も設定されていますが、時間で物語の長さを決めるというのはなかなか珍しいのではないでしょうか。
近年の秩父市は、『あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない』から始まる『秩父三部作』と呼ばれるアニメの聖地として知られています。ちょうど、アニメツーリズムが流行った時期でした。
今はその波も落ち着いた頃かと思いますが、
コンテンツ×観光産業で盛り上がった秩父だからこそ、様々なメディアミックスを見据えることのできる小説——その作家を発掘する『秩父文学祭』が開催されたのかなと。
一次審査が日芸というのも、この文学賞ならではです。
西武線沿線に校舎がありますし、何より文芸学科がありますから。学生たちにとっても良い学びの場になるでしょうし、素晴らしい取り組みだと思います。
一次審査の壁が高い
応募数約430作品に対して、一次審査通過数はわずか7作品。
通過数については事前に明示されておらず、一次審査の結果が発表されて「これは無理だわ〜」と。
この時点で授賞式・朗読会のチケットが発売されており、奇跡的な結果を信じて申し込んでみましたが、7作品に残れる自信はない(笑)
だめでもブログ書いてみるからいいか、なんて気持ちで授賞式から参加してきましたが、
式の開催が秩父ということで、遠方から応募された方は一次審査落選の時点で、式への参加意欲はなくなってしまうのではないかと。
今回、大賞含め5つの賞が設定されていましたが、二次審査に進んだのは7作品。もうちょっと多くてもよかったのでは……?
誰を秩父に呼びたかったのか
秩父を盛り上げるための文学賞ですから、秩父を訪れる人が少しでも増えてほしいという思惑があると思うのです。
梅津さん効果でファンの方が多数来場されていましたが、文学賞を創設してのイベントですから、応募された方々が秩父を訪れたいという気持ちを抱けるような施作が必要だったように感じます。
今回、授賞式・朗読会以外にもイベントやワークショップが開催されたのですが、
文学賞に応募した方向けとは言い難いものも多く、
誰を秩父に呼びたいのかが不明瞭なまま企画が立てられたのかなと思ってしまいました。
せっかく、約430もの作品が秩父短編文学賞に応募されたのですから、その縁を繋いで集客につながるようなイベントが開催されたらよかったのに、ともったいなく思います。
例えば、日芸の講師の方から一次審査の総評やステップアップのための技術論を聞けるセミナー形式のイベントであれば、一次審査で落ちていても、聞きに行ってみようかなと思うんじゃないかと。
第二回秩父文学祭に期待すること
開催される各種イベントの情報解禁をある程度統一する
額賀先生と梅津さんのクロストークと、さんかくさんのトークイベントが、授賞式前日の6/21開催だったのですが、情報解禁が授賞式のチケットの先行販売より後だったのです。
せめて同日であれば良かったのですが、別日に開催されるのであれば、チケット先行販売の時点で概要だけでも発表していただけたら嬉しいです。
秩父市街のにぎわい創出を意識する
梅津さん効果で集客している以上、当然ではあるのですが、ポストカードを配布する店舗だけが賑わっている状況でした。
せっかく駅や神社、市街へのアクセスが良い会場で実施するのですから、
もっと一帯の賑わいを創出できるような施作があっても良かったのかなと思いました。
市街を散策できるのは授賞式から朗読会までの間くらいでしたので、あまり時間がないため仕方ない部分はあるかと思いますが……。
Xでも苦言を呈している人がいましたが、イベント当日になってもX公式アカウントが沈黙を貫いていたのが疑問でした。
「暑いから注意してね」「会場からはこういう観光地がありますよ」「会場の隣でグルメフェスタがやっていますよ」
なんて、いくらでもつぶやけることはあるはずです。
秩父文学祭はただのオタクイベントではなく、自治体が協賛(市長が実行委員会会長)なのです。
このあたりは産官学の「産」である西武不動産が担当していたでしょうから、
はっきり言ってお粗末だなと思います。
いままで秩父に来たことのなかった人も「また秩父に行きたい!」と思わせるイベントであるために、最大限努力してほしかったですね。
不動産と違って、街おこしというのは売って終わりじゃないですからね……