オタク夫婦の「○○が好き」

30代オタク夫婦の語り場です。漫画・映画の感想がメイン。特撮と世界一初恋とBANANA FISHもアツい。そんな夫婦です。

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劇場版『Gのレコンギスタ Ⅳ』「激闘に叫ぶ愛」 感想

新宿ピカデリーで観てきました。

 

 

劇場は9割近く席が埋まってたかな。コロナ禍とは言えどもさすがガンダムといったところか。

 

私たち夫婦はテレビ放送は未視聴で、今年に入ってからバンダイチャンネルで一つずつ観た感じです。 

『Gのレコンギスタ Ⅲ』「宇宙からの遺産」は無料公開期間に見られたのでラッキー。

 

 

「富野由悠季の世界」の展示で富野監督が「スタッフはすごい頑張ってくれてるのに、あんまり評判がよくなくてゴメン」ってメッセージをスタッフたちに出していたのが印象的だったので、劇場版観始める時も、実際どうなんだろ って心配ではあったのですが、

「やっぱおもしれえな」となったところでこうやって4作目から劇場に足を運ぶことになった感じです。

 

 

最終章も観に行くつもりなので、『Gレコ』についてはそのときに語るとして、

今回一番よかったのは、やはり終盤の「GセルフVSマックナイフ」戦

 

「えっ…なにこの気迫あふれる作画は…」って息をのんでしまうぐらいすごい気合いの入りようでした。

劇場を後にしていく中でも、周りの観客も口をそろえて「マックナイフ戦やばかったな…」って言ってました。

 

 

個人的にはマニィがジーラッハの操縦し始めたあたりで「これ、多分レコアさんみたいに寝返るだろうな・・・」と思ったら本当にそうなってちょっと「ふふっ」ってなった。

 

さて、2週間後に公開予定の最終章も楽しみ楽しみ。

 

 

映画『峠 最後のサムライ』感想 原作読んでてもキツいか

 

司馬遼太郎の『峠』、読んだのは10年ぐらい前なんですが、めっちゃ好きなんですよ。

 

 

 

読んでるうちに自分が「長岡を救わなくては!!」って気持ちになって、それでも結局継之助の想い虚しく…ってなっちゃうところはもう読みながら泣いてたぐらい、思い入れのある作品でして。

 

だから映画化すると知った時は嬉しさ半分、「上中下の作品を映画でやり切るのか」不安半分でして。

 

ということで公開3日目に観てきました。

一言で言うと、不安的中

 

以下ネタバレありの感想。

正直辛口な感想です…

 

 

 

 

時間がないのに余計なシーンが目立つ

舞台設定の説明不足

『峠』の原作は河合継之助が京都に行くぐらいからその最期までを描いているので、当然2時間の映画では終わらないわけです。

映画は黒船襲来を説明した後、大政奉還の場面から始まります。

 

まずここで疑問なんですけど、大政奉還のシーンってこの映画に必要でしたかね?

大政奉還しました→それでも大久保・西郷は戦争を選びました。(鳥羽伏見→戊辰戦争)

 

この序章から、河合継之助と長岡藩が戊辰戦争に巻き込まれるまで、映画として間が空きすぎて主人公がおかれている状況がつかみにくい仕上がりとなっています。

 

『峠』を観るような人たちは、少なくとも大政奉還ぐらいは履修済だろうから、完全に無用シーンになり果ててます。

まぁ、大政奉還って「絵」になるから映像にしたいぞってのはわかるんですけどね。

 

大政奉還はがっつり時間を割く癖に、映画に直接的に関わってくる奥羽列藩同盟のことは全然説明がないのが導入部分として厳しい。

というか、映画を通して長岡藩が日本列島の中で結局どこにあった藩なのか説明もないので、「奥羽」との地理的距離感もわかりにくい始末。

 

ここはかなりキツい仕上がりになってしまったなと観ていて思いました。

 

人物描写ももちろん物足りない

時間切れな舞台設定なので、当然出てくる登場人物もバックがなく、

「継之助と親しくしてるけど、誰?」

というのがかなりいました。

庶民に慕われる継之助→戦いの中での庶民との交流

という、登場人物に再度出てくるフラグを立てていってもらわないと、急に出てき過ぎて感動が薄い。

川で孫の遺体を洗う老人を戦いの中で見かけて、領民の為に尽くしてきた継之助が「俺はこんな風にするために戦っているわけじゃないんだ…」と悔やむ場面、

自分が原作を読んでいて印象に残ったシーンなのですが、これも原作再現があるものの、ぽっと出すぎて映画では無駄に消費されてしまった印象が。

 

 

チャージマン研方式

 

『チャージマン研!』で、ジュラル星人をやっつけて一件落着。研たち家から笑い声が聞こえてきて・・・引きの絵が時間調整のためにずっと映されて終わり。

ってあると思うんですけど、これと同じ絵が今作でも見られます。

 

えっ、山の映像…こんなにいる? ってのが少なくとも2回あった。

うち1回は、只見を抜ける山中の絵なので、継之助の無念さを伝えようとしてたと思われるんですが、

先入観として「長い話を短い話にするわけだから時間が足りない(はず)」というのがある中なので余計悪目立ちしてしまう結果に。

 

 

メタネタを時代劇に入れるな

奇しくも同じ司馬遼太郎原作で昨年公開された(いまいち盛り上がらなかった)『燃えよ剣』でも、演者の芸人の持ちネタをブッコんできて、我が家としてはヒエヒエになりました。

 

pisuke9190.hatenablog.com

 

今回も河合継之助の妻を演じる松たか子にその台詞言わせたかっただけだろ、ってシーンがあって(そこでの笑顔がこの台詞にはそういう含みあるなって笑い方をしているように見えた…笑)

うーん、はい。

 

 

総論

少なくとも大政奉還のシーンはいらないと思う。

 

映画『シン・ウルトラマン』感想 庵野秀明によるオタク山手線ゲームを君は見たか

スーパー話題の『シン・ウルトラマン』、公開2日目で観てきました。



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実はこの感想を書く前にも、いっちょ前に『シン・ゴジラ』と比較して…みたいな文を書いていたんですが、ちょっと手垢のついたやつになってしまったかなと思って記事をあげないことにしました。笑

 

 

正直言って、『シン・ウルトラマン』はつまらなくはなかった(4段階中の評価2)ってところなんですが、概ね周りの声も同様な感じです。

見に行く前はまさかとは思っていたのですが、

これはひとえに

 

庵野秀明がウルトラマンに思い入れがありすぎて、ウルトラマンのよさを高度に抽象化していて俗人には

「それが何かの比喩であることは確かなのだが、何の比喩だかがわからない」

状態になっているからかな、と。

 

このあたりは、『シン・ゴジラ』におけるゴジラが原子力災害のメタファーなんだ、というのが肌感覚でわかるのと真逆です。

 

 

この映画は庵野秀明によるオタクの山手線ゲームなんですよ。

 

(オタクの山手線ゲームについては、以下のリンク参照)

anond.hatelabo.jp

 

 

2時間弱の映画の中で、恐らくありとあらゆるところに

原典であるウルトラマン(及びそのシリーズ作品)をモチーフとした何かがでているんでしょうが、

 

ウルトラマン→○○→実際の映画の表現

 

 

と2段階連想になっているので、「ウルトラシリーズ」と「庵野秀明」の2つ造詣が深くなければ、この映画のオタク的良さが完全に理解できず、我々は消化不良に陥った感じがして、そのモヤモヤ感が映画への評価に繋がっていると思います。

(というか、この映画にはオタク的良さしかないと思う。メフィラス星人・山本耕史が禍威獣は環境を破壊してきた人類の…みたいなことをぼそっと言っていて「おっ?」と思ったけど結局それ以上の掘り下げなかったし)

 

で、この映画の最終的な感想の着地点としては、

こんな大がかりに山手線ゲームで作品作れちゃう庵野秀明のオタク力(ぢから)ってすげぇよなぁ…

ってとこですかね。

 

だからなんていうんですかね、お手上げですよね。

メフィラス星人が他の居酒屋でも飯を食ってるんじゃないかと想像させる余地があったてよかった、

だとか、

長澤まさみは巨大化しても美人でよかった、

みたいなつまんねえ感想しか吐けないんですよね。はい。

 

 

 

 

 

pisuke9190.hatenablog.com

 

映画『メイド・イン・バングラデシュ』感想

5月6日は有給休暇推奨日(半強制)だったので、平日休み&やることない日にお決まりの、岩波ホールで映画を観てきました。

 

観た映画は『メイド・イン・バングラデシュ』


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はい、そのまんまバングラデシュ映画です。(これが人生初めてのバングラデシュ映画)

 

主人公シムの働く工場は、先進国のファストファッションを作っていて、労働環境は良いとは言えない。そんな中火事が起こり、シムの友人が死んでしまう。

「工場が停まってたんだから残業代はもちろん、先月分の給与も払えるわけねーべよ!w」に怒ったシムは偶然知り合った労働者支援団体の職員ナシマに「組合を作ったらええんやで」とアドバイスを受け…

 

 

こんな感じですかね、あらすじは。

映画は実話を元にした映画のようです。詳しくはHP見てください。

pan-dora.co.jp

 

 

確かに10年ぐらい前はmade in Chinaだった服も、ベトナムやカンボジアときて、バングラデシュ製のものをよく切るようになりました。

 

岩波ホールでやるぐらいですから、この映画も決して爽快感があったり観終わった後にすっきりするタイプのものでは決してありません。

 

映画が終わって劇場が明るくなり、自分たちを含め観客の姿が見えてくると

「この服もシムたちが必死になって作った服なんだろうか…」と顔も知らぬ彼ら彼女らを文字通り「搾取」してこれを享受している自分らにちょっと嫌気がさします。

 

劇中でこんなやり取りがあります。

ナシマ「キミら、このTシャツ一日に何着作ってんの?」

シム「1650着ぐらい」

ナシマ「・・・キミらの月収だとこの服、2,3着しか買えんで」

 

Tシャツですからいいとこ3000円でしょう。それが3着だと9000円。

月収9千円… 日本であれば超短期バイトを1日やれば1.4倍ぐらいは稼げてしまう金額です。

 

 

ただ、じゃあ私たちはバングラデシュの人たちに対して何ができるだろうか、と考えたときに正直に言うと思いつかないんすよね。

ファストファッションを利用しないことがそれに繋がるのか? 究極的にはそうかもしれませんけど、ムーブメントとして起こらない限りはなかなか実を結ばない努力なのかなと考えてしまいます。

 

 

 

シムが労働組合を作っていく中で、夫(しばらくは無職)の無理解だったり、当然会社側からの妨害工作も入ってくるわけですが、

印象的だった出来事があって、映画が終わった後、エレベーターを待っていたんですけど、一緒に映画を観ていたおばあちゃんが

「私も昔労働組合に入ってたんだけど、あの子(シム)と同じように色々妨害されたわよ~ 特に≪手当だすから、しばらく休んでもいいぞ≫って台詞、あれとまんまおんなじことを言われたわ。どこの国も同じね・・・」

 

私「ひええ・・・・」

 

 

岩波ホールは上映する映画の雑誌や新聞での批評記事を壁に貼っているんですが、今回見つけて意外だったのが、某女性雑誌の映画紹介コーナーが掲示されてました。

そのコラムの中では「旧習や宗教のしがらみに立ち向かい…」と書いてあって

「????」となりました。

いやいや、旧習は多分「男は外、女は家」を無職夫のくせに言ってきてるってのがそこに当てはまるんでしょうけど、宗教がマイナスに働いている描写なんてどこにもなかったぞ…と。

 

それと、労働組合を立ち上げるのにあたって、バングラデシュでは国の許可が必要っぽく、主人公が足しげく認可をもらいに通っては

「まだ!w」

「上司が今見てる!w」

と追い返されたり、意思決定者も当然無能で全然主人公の味方になってくれないんですが、コラムでも

「労働者を守る立場のお役人が守れないなんて!」と怒ってました。

 

いや、それはそうかもしれないけど…

この映画を観てそこ思いついちゃうか~ と感心しました。

 

うまく紹介しないと大スポンサーでもあるファストファッションから変に目を付けられちゃっても嫌ですからね。

ならこんな映画をわざわざ取り上げるなよ、とも思ったりしますが。

 

映画『劇場版シティーハンター 新宿プライベート・アイズ』 感想

バンダイチャンネルで観放題だったので、観てみました。

2019年の作品、当時Twitterでめっちゃくちゃ盛り上がってましたよね。

 

 

 

アラサー夫婦なので、『シティハンター』はいわゆる「GET WILD退勤」ぐらいの知識しかなかったのですが…

そんなしょぼしょぼ知識でも十二分に楽しめる、スカッとする作品でした。

 

というのも、シリーズ十数年ぶりの新作であるがゆえに、ちゃんとお決まりの文法(観てない私たちでもなんとなく予想できる作り)で作品がちゃんと作られており、「キャッツアイ」の登場あり、「GET WILD」ありと

初見さん大歓迎な作品になっていました。

 

これは当時新宿の映画館に観に行っても損はなかったなぁ…と少し後悔。

 

 

 

 

公開がたった3年前でも、あの頃と色々変わったよな…と思うシーンが多々ありましたね。

攻撃用ドローンがもはやSFのものではなくなりましたし、

「インフルエンザ」もこの数年はめっきりご無沙汰な言葉になった感じがします笑

後はとにかく明るい安村のギャグも懐かしかった笑

本人は今でも「有吉の壁」でよく見かけますが、「安心してください、履いてますよ」の一発芸は見なくなりましたね

 

映画『ユダヤ人の私』感想

「強制収容所にいた連中はいいよな、空襲から逃げ回らずに平和に暮らしてたんだからさ」

 


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前作『ゲッペルスと私』を観ていたので、2作品目である今作も観てきました。

 

さらっとあらすじ。

今作の語り手である1913年生まれのマルコは、ドイツによるオーストリア併合(アンシュルス)によって熱狂的に反ユダヤ主義へ染まる国から脱出するも、チェコスロバキアで逮捕され、強制収容所に入れられてしまう。

強制収容所から生還後、再びオーストリアに戻り、オーストリアのユダヤ協会会長として活躍する。

この映画はマルコ3歳の頃から、戦後オーストリアに戻るぐらいまでの彼の半生を独白していく、という作りです。

 

 

両親と兄妹に囲まれて過ごし、学校の不穏な先生に嫌気がさして、マーケット(これ、正確にはなんて言ってたかな、忘れてしまいました。)で色々な人から良いことも悪いことも学び、青年になればダンスに女の子に熱中し、仕事で成功すればイタリア製の服を着て…

とアンシュルスに至るまでは20世紀前半、戦間期に青春を送る1人の若者であったことを語るマルコ。

 

彼から語られる、それからの強制収容所での体験は、まさに耳をふさぎたくなることばかり。

ここに載せるのが憚れるような胸が痛くなる強制収容所でのある母子の出来事、かなり強烈でした。

 

そして自分の中で一番心にずん、と来たのが記事冒頭に残した言葉。

強制収容所からオーストリアに戻ってきた元囚人たちに投げかけられた市民からの言葉として紹介されていました。

(この言葉とナチスドイツを歓迎するウィーンの広場に集まった若者たち熱狂の中に、彼自身も存在していたことで、「オーストリアはナチの最初の犠牲者論」を批判している、かな?)

 

強制収容所、そのものの話はもちろんおぞましい出来事であることは間違いないのですが、

語りの切れ目切れ目に強制収容所の出来事と、オーストリアの戦争犯罪を追及するマルコのところに送られてくる中傷手紙の内容が披露されます。

強制収容所はなかったとする歴史修正主義者、反ユダヤ主義者からの、彼に向けられる生々しいメッセージの数々。

 

それが私たちにとって、私にとって恐ろしい。

私たちがTwitterやヤフコメでいつも目にしてしまう表現の自由を明らかに超越しているヘイトスピーチとほぼ一緒

16年日本公開の『帰ってきたヒトラー』の時から世界は何も変わってないし、危ない方向により進んでいるんじゃないかと思う状況です。

 

マルコは人間の残虐性にも驚きを見せていましたが、

社会全体の不安が極限まで達したとき、自身の安全性を確保するためならば人はどこまでも「やれる」ようになってしまうのではないか、と私は考えます。

 

それが人類史上で起こったのは、1945年より前の時代のみであった、と言い切るためにも私たちは、ドイツやオーストリアで起こったような社会全体の不安を免罪符とした暴力に常に反対する姿勢でいなければなりません。

 

 

内容が内容なだけに、面白い! ぜひ観てください! とは言えないのだけれど、マルコが語ったことが過去のことであり、そして未来のことであるかもしれないという事実に向き合わないといけないと思うんですよね…

『男はつらいよ』第12作 私の寅さん 感想

久しぶりの寅さんです。

 

 

本当は13作目も見てたんですが、感想書きませんでした。

 

 

12作目「私の寅さん」の見どころは、なんといってもとらやのみんなが旅行に行って、寅さんが留守番をするという逆転シーン。

 

いつもは好き勝手やってる寅さんも、とらやに誰もいないと源公やタコ社長が付き合ってくれててもおセンチになってしまい、「まだ電話がない!」と旅先のさくらにプリプリ怒る始末。

 

でも寅さんの気持ち、よくわかります。

私も学生時代は隙あらば鉄道旅行に行っていましたが、やっぱり「おかえり」を言ってくれる家族がいるからこそ、いけたと思っています。

日本全国を回って盆暮れの2回に故郷に戻ってくる寅さんもとらやでは飄々とやっていますが、旅先ではいくつもの悔やむことや悔しいことがあったと思うんですよね。

そういうのをいったんリセットしに帰ってこられる故郷というのは代えがたいものだろうなぁと、今作を見て思いました。

旅行を切り上げさせてしまった寅さんが照れ隠しでお風呂沸かしてる前半のラスト、シリーズ屈指の名シーンじゃないかなと思ってます。

 

前半の話とマドンナ登場の件はぶつ切り状態なので、ちょっともったいなさもあるんですが、まぁ、細かいことは気にしないということで…笑

 

寅さんは持たざるモノへの敬意と畏怖、2つの感情がいつも渦巻いていて、学者や勤め人にその傾向が顕著に表れますが、芸術家にも同じような感じですね。

その場かぎりのテキ屋稼業ではたどり着けない永続性が芸術家には特にありますから、寅さんがガッと言ってしまうこともわかります。

 

だからこそりつ子の「パトロン」になれたかと思った(その永遠性を享受できるようになった)寅さんが、りつ子にフラれてしまい、柴又を去る姿が余計に悲しく見えます。

 

そんなちょっと悲しい終わり方だけれども、ラストシーンでは絵の啖呵売。

そこには非売品の寅さんの絵。

この絵がいいですよね。留まらない寅さんが、留まっている絵。

永遠性に触れられた寅さんの伸びやかな声で終劇、になるのがまたいいんだよなぁ~。

 

 

 

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映画『ひらいて』感想 「こじらせ系青春映画」と侮ることなかれ

原作も読んだことあるし、主演の山田杏奈さんが好みのタイプで、スズキ・スイフトのCMをいつもじっくり見てしまう人だったので、思い切って観に行きました。

 

正直な話、あんまり期待せずに…だったのですが、すいません、撤回します。

めちゃくちゃ面白かった。

そして心の中になんか茶黒いモゾモゾを残らせる映画でした。

 

カップルで見に来てる人いたけど、これデートで観る映画ではない…笑

 

 

 

以下、ネタバレありの感想

 

 

 

Wヒロインの演技がすごい

山田杏奈さんのイメージって私の中では若い!元気!後輩キャラ!(←これはCMの影響)ってところだったんで、主人公、愛の目が透き通ってない演技にゾクゾクしてしまいました。

ほんと、「目」がすごいんですよ。

くりりとした目が特徴の女優さん、目を武器にここまでやれちゃいますか、と。

 

そして、美雪役の芋生悠さん

こちらはお初の女優さんだったんですが、いや~やばいっす。

地味な女の子が愛の手に堕ちていくあの妖艶さ…

 

 

「文化祭に向けて、坂道シリーズのダンスをセンターで踊るような女の子」

冒頭のシーンだけで主人公の愛が世の中でどんなポジションにいるかがわかってしまう名シーン。

センター張れるぐらいの女の子だから才色兼備なんすよね。

最初はなんだこのシーンは!って思ったんですけど、2回目の練習のシーンでハッとさせられました。

ただ機嫌が悪くなってるだけじゃない、「あぁ、木村愛がここまで堕ちてしまったのか」と目の当たりにさせられる意味のある描写だったんだ…と。

 

 

 

 

美雪の部屋

愛が美雪にキスを迫り、押し倒す…その直後母に呼ばれた美雪が部屋を出て、何事もなかったかのようにふるまう。

この後の

「あんなことがあっても親の前では娘に戻るんだね」と笑う愛に対して、

「お母さんのことが好きだから」と返す美雪。

このシーンめっちゃ好き。

 

濡れ場もすごかったですよね。その描写はもちろんのこと、時間をかけて手を洗う愛のあの目、あの目なんすよ。

 

 

後、語りたいこと

原作を読んだとき、私は「暴走する承認欲求の成れの果て」がこの作品のテーマだと思っていて、原作を読んだのももうかなり昔ですから、愛が美雪を奪う、というところとその「承認欲求」というところしか話は覚えていなかったんですが、

この作品は「承認欲求」についてはあまりクローズアップされてなかったよな? と思います。

 

 

そもそも、本当にたとえ君のことを愛ちゃんは好きだったんですかね?

この感じ、夏目漱石の『こころ』で「私」は本当に「お嬢さん」が好きだったのか問題と似たところあると思うんですが、

「ひらいて」の主人公は別に美雪に対しての感情はゼロスタートだし、常にフェイクですよね。

 

『こころ』問題はKの死だとか、作品そのものの古さでマスキングされている感がありますが、

今作の「たとえ君のことが本当に好きなのか?」・「たとえ君を手に入れるためにどこまで愛ちゃんはやれるのか」

は明確な答えが準備されていない分、うまく呑み込めない「何か」が映画館を出た後にも腹の中にずっと気配が残ってるんですよね。

 

成績もよくて、明るくて目立つタイプの愛(山田杏奈)は、同じクラスの“たとえ”(作間龍斗)にずっと片思いをしている。 ひっそりとした佇まいで寡黙なタイプだけど、聡明さと、どことなく謎めいた影を持つたとえの魅力は、 愛だけが知っていた。

(公式サイト・Introduction & Storyより)

 

とあるんですけど、片思い本当にしてたかってマジでわかんないですよ。

てかそんな描写あったか…? と。

そりゃ、愛ちゃんの口から「1年生の時からずっと気になってた」みたいな台詞は劇中にありましたけど、その前にたとえ君が「お前嘘ついてるだろ」って言っててその気持ちが嘘であることを示唆しています。

 

最初に言った「承認欲求」の話がないような気がする、ということも含めて、

それは作品の描写不足ではなくて、あえて映画の中で描写しなかったことで愛ちゃんの不気味さを色濃く描写したんじゃないかと思うわけです。

 

…首藤凜監督すごい。

 

 

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映画『燃えよ剣』感想 VS『蒼天を衝け』

夫婦の出会いが大河『新選組!』だったということもあって、新選組については結構コダワリあったりする私たち。

ってことで観てきました。もちろん原作も読んでます。


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物語は箱館、五稜郭で土方歳三が過去を振り返り、それを口述しているという形で始まります。

「知ってるか? エースは3つにわけられる」

みたいな感じ。

 

石田村→清河八郎らと京都へ移動→芹沢鴨を倒し新選組へ→池田屋事件→山南さんの死・油小路通の戦い→鳥羽伏見の戦い→近藤沖田の死→会津→函館

と忙しいながらもすべて網羅してます。

 

この中でも芹沢鴨との軋轢に結構時間を割いてたかな。

公式HP見てもらえばわかるように、芹沢鴨は結構重要なポジションなんです。

映画『燃えよ剣』公式サイト 大ヒット上映中!

 

逆に土方が関わってないので、池田屋事件は観客が観る前に共有している

「新選組の映画なんだから池田屋事件はこのぐらいだろうな」を若干下回るぐらいの比重。

 

 

 

 

 

 

岡田准一がすごい

今まで意識して岡田准一の作品って見たことなくて、自分としてはJ-WAVEで日曜24時からやってるラジオパーソナリティとしてのほうが印象強いんですけど、

武州のバラガキから才能を開花させて新選組副長として活躍していくというのがよく描かれてます。

 

当然大河ドラマ『新選組!』の土方俊三と比較するわけですが、

組!の土方が田舎臭さを当初から出さずにいたのに比べ、今回の土方は最後まで田舎臭さを保ったままスマートになっていくのがよかったですね。

こちとら天領の百姓やぞって台詞が前半にも後半にも出てきたのが印象的。

 

んでみんな言ってるんですけど、殺陣がほんとすごい。

岡田准一が個人的にも練習してるってのは聞いてましたけど、ほんと魅せるよなぁと。

忙しい映画だから仕方ないんだけど、もっと殺陣を見せてほしかったというのが素直な感想。

 

 

山田涼介よかったじゃん

大人気漫画が実写化! 山田涼介主演! って聞くと

あっ…(察し)ってなること多いんですけど、

沖田総司役はぴったりだったっすね。あの細い感じがよく出てた。

 

 

VS『蒼天を衝け』

コロナめ~! って思ったのが1点あって、それが徳川慶喜の描き方。

今作では慶喜は味方を見捨てる小心者って描写なんですが、

うーん、令和3年を生きる私たちは草彅剛の徳川慶喜に心を射抜かれちゃってるんですよねぇ…

だから山田裕貴も頑張ってるんだけど、

「うるせ~! 俺たちの慶喜公はこんなヤツじゃない!!」という気持ちに溢れちゃって仕方なかった。

 

それほど草彅剛の徳川慶喜って、エポックメーキングだよな~と感心する次第です。

 

※『燃えよ剣』もコロナの影響で公開延期になっちゃったのでこんな風に思ってしまったんですが、延期せず、令和2年にやってたら全然気にならなかったと思います。

(ちなみに、今作には渋沢栄一は出てきません)

 

 

井上源三郎が年寄りなのをどう思うか問題

『組!』のイメージしかないので源さんがめちゃくちゃおじいちゃんでちょっとビビります。

『組!』の源さんが学校の教頭先生ぐらいだったら、今作の源さんは校長先生引退して、再任用やってそれも終わって…ぐらいの年齢。(クソわかりにくい例え)

これは主演の岡田准一をはじめ、演者の年齢層が高いからその分源さんの年齢も上がっちゃったかな、ってところですかね。

 

とはいうものの、大河ドラマがそれ以前の新選組の映像作品と比べると演者が若かっただけで、恐らく『組!』がファースト新選組じゃない人は特にびっくりしないのかも。

 

 

ラストどう思います?

ほんとのラストシーン、

「俺が用があるって言ったら切り込みに決まってんだろ!」

で終わってもよかったのではないだろうか…

 

切り込みで馬もろとも銃弾を浴びせられるシーン、あれいらなかったのでは。

土方歳三がここまで愛されるようになってるのは、最期どうなったかわからない、ってのが大きいと思っていて、今作もその例に乗って描写すべきだったのではないでしょうか。

最期土方が運ばれてくるシーンとか、いくらエンドロールに突入するからって蛇足だったのでは。

 

 

 

 

言いたいこと

・間者の山崎烝、なんでこいつこんなにブツブツ言ってんだよ、と映画観てるときは思っていたんですが、聞いたら芸人である演者のネタがそのブツブツ言うことらしいので、劇中で山崎烝がブツブツ言ってるのはメタネタだったらしい。

私は公式HPを見るまで山崎烝が芸人だってことに全く気付かなかったので、それを知ったとき、この映画はなんて愚かなことをしたんだろうなぁと悲しくなった。

なんか世界に売り出すぞい、みたいな雰囲気出してるけどもうこの1点でアウトでしょ。何考えてるんだ監督は。そういうメタネタを放り込む映画じゃねえだろこれ。

山崎烝にぶつぶつ言わせるんだったら、じゃあ藤堂平助にもピラメキーノダンスさせろよ、ばーか。

 

・公式HPで著名人の応援コメントが出てるけど、あー、映画ちゃんと見ないで、新選組に関する自分の既知の情報だけで書いてコメント出しただろうなぁ~って人が何人かいる気がする。

 

まとめ

2時間ちょっとという時間制限の中では、しっかりと纏まってるよい映画だったのではないでしょうか。

もちろん言いたいこと、で書いたような細部には残念ポイントがあるのは否めませんが、別に気にならなければどうということはない、って

映画『伝説巨神イデオン 発動篇』感想 アニメ史に残る大作だこれは…

イデオンTVアニメ版を観切った勢いで劇場版も見ました。

 

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『接触篇』はTV版完走したので必要ないかなと思って未視聴。

まぁ、レイズナーOVAだって3作品目しか見てないし…

 

 

 

 

 

とにかくすごい

視聴する前は、「そうは言ってもTV版と同じように、最終的にはイデが発動して終わりなのでは?」と思っていました。

スパロボのバッドエンドしかり、ニコニコ動画での切り抜きしかり。

 

でもそんなことはなかった。

 

主要メンバーが、ロゴダウから一緒に逃げてきた皆々が倒れていく、もはや洗練された狂気としか形容できない描写…

特に驚いたのはカララが結局は死んでしまうところで、それまでイデの力によって奇跡を何度も導き、またベスとの子、メシアもいるわけだから…

 

「裏切り者の女の撃つ弾が当たる物かよ!」 バキューン

 

あぁっ…

 

イデによって導かれる可能性の高かった子どもたちもがっつり倒れていくじゃないですか。

特にアーシュラ。(ちびっこ3人組のお姉さん)頭吹き飛んでたし…

カーシャの死だって、本当にあっけない。

コスモとのヘルメットゴッツン、のシーンよかったのになぁ。

 

 

黒富野黒富野!と今までキャッキャしていた自分がちょっと恥ずかしかったり。

「これがホンモノやぞ」と目の前にたたきつけられたような全滅エンドでした。

本当はもっと一人一人のキャラクターの最期を描写してくれれば…と思いもしましたが、それをしないからこその「ホンモノ」なんでしょうね。

 

発動編は、姉妹であって全く別の道を歩むことになってしまったハルルとカララの物語でもあるのかな、と。

ハルルが吐露していましたが、父に「ハルルが女だったらなぁ」と思われ、自分は恋人を失ったのにも関わらず、妹は好きな男の子を身ごもる。

気強い娘、姉妹の姉を演じ続けねばならなかったハルルの悲しみがひしひしと伝わってきました。

 

だから最後、魂となってダラムと結ばれてよかったねお姉さま…

 

多大な影響をクリエイターに与えた作品

これも先人たちが何千回も語っていることでしょうけど、この映画のラストはのちの『エヴァンゲリオン』にめちゃくちゃ影響与えてますよね。

イデが叶えたかった思想というマクロなものから、突然の実写のカットが入るミクロなものまで。

観終わった後に二人で「これ人類補完計画の元ネタじゃん」と言い合ってしまいました。

富野監督は『ガンダム』を生み出したからすごい、ということになってますけど、『ガンダム』と『イデオン』を生み出したからすごいんだと言いたい!

 

そして、とにかくこの発動篇のすごさを語りたい、語りたいんだけど周りに見たことある人0人という悲しみ。

ネットに広がる論評等はこのブログを書き終わった後、じっくり読もう。

 

 

『伝説巨神イデオン』を完走して

『イデオン』を見て思ったのは、やはり作品には哲学がないといけなくて、また受け手の私たちも哲学のある作品を求めなければならない、ということだと思うんですよね。

社会人も長いと、ついついインスタントな作品(アニメに限らず)を求めがちなんですが、

監督が伝えたかったことはなんなんだろう、私たちは何を汲み取るべきなんだろう

と考えることを「オタク」としては避けて通ってはいけないかなと思っています。

 

 

 

 

 

映画『Summer of 85』感想 『BANANA FISH』ファン必見

『BANANA FISH』好きな人が好きそうな映画がやっているらしい、ということで夫婦で見に行ってきました。

 


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結論から言うと、『BANANA FISH』が好きな人が好きな映画です。(断言)

もっと詳しく言うと、『BANANA FISH』の最終回後を描いた短編『光の庭』まで読んだファンにおすすめしたい!

 

 

 

『BANANA FISH』ファンが観るべき理由(妻)

自分のせいで亡くなった親友の喪失をどう乗り越えるか。

この映画では、主人公のアレックスは親友ダヴィドとの約束を果たすために手段を選ばず行動します。

ダヴィドの亡骸を見なければ彼の死に納得ができないと、守衛を騙して安置所に入ったり、夜の墓地に不法侵入したり。

恋心が歪んで怒りや悲しみになって、その行き場のないエネルギーが爆発して(常軌を逸したと他者から思われても仕方ないような)行動を起こしました。

彼の死を自分の目で見ないと納得できない。

アレックスと、『光の庭』の英二の違いはここでした。

アレックスはダヴィドの死を認め、その上で墓の上で踊るという約束を果たしました。

思いの強さが行動力に直結しているので、安置所で確認できなかったとしても、墓を暴いてでも確認しようとしたんじゃないかな、と思わせる狂い方でした。

一方、『光の庭』の英二は日本とアメリカという物理的距離によって死を直接確認することができませんでした。

かといって、墓を暴くような非常識さは持ち合わせていなくて、だからこそ『光の庭』という短編で救いが描かれたのでしょう。

『BANANA FISH』ファンが『Summer of 85』を観ることで、『光の庭』の英二がもしアッシュの死を直接確認できていたら、という『もしも』を考えることができるんじゃないかなと思います。

そして、どちらにしても良い結果にはならなかっただろうことを突きつけてくれます。

 

 

 

『運命の相手』理論(夫)

ここからは夫のターン。

大学で「ファムファタル文学」ばかりやってたので、この映画もそれと同じ文脈で観終えました。 ダヴィドは女じゃないけど、運命の相手なのは間違いない。

ファムファタル(運命の女)についてはこちら。

ファム・ファタール - Wikipedia

 

どこが「ファムファタル」なのかちょっとあらすじを書きだしてみましょう。

アレックスは普通な人生を送っていたのに、ダヴィドとの出会いによって生活が一変してしまう。

ダヴィドのミステリアスな容姿・言動に強く惹かれていくアレックス…

二人は「どちらかが先に死んだら残されたほうは墓の上で踊る」という約束を交わす。

段々とアレックスへの愛が依存するかのように重くなってしまい時に嫉妬に苦しむようになる。その重さにダヴィドは嫌気がさし、二人は破局してしまう。

ダヴィドは死んで、アレックスは二度とダヴィドが手に入らないことにもがき苦しむ。

 

この太字にしたところが『マノン・レスコー』→『椿姫』ラインのファムファタル要素ですが、もうほとんどソレなんですよね…

夫はこの映画に関して、前情報なしで観に行ったので、もういつアレックスに破滅が訪れるのか怖くてソワソワしながら見ていました。

 

個人的に好きなのはラストで、物語冒頭で酔いつぶれてたあのアニキとアレックスが仲良くなっていくシーン。

多分アニキは正規ルート上のアレックスの未来の姿ですよね。お父さんが同じく造船場で働いているし。何より二人は似ているからダヴィドに助けてもらえたんでしょうし。

 

アレックスも最期は死んでしまうんだろうなぁと思っていたんですが、アニキをラストに持ってくることによってダヴィドの死を乗り越えて成長できるんだぞ、という希望を見せてくれたんじゃないでしょうか。

 

ん?

あのアニキをアレックスの未来の姿だと仮定すると、冒頭でなぜ酔いつぶれていて、なぜダヴィドに助けられたのかも納得がいきませんか?

ダヴィドの死によってアレックスは

墓の上で踊る約束を果たし、社会的な罰を受け、ダヴィドから解放される(正ルート)

約束を果たせず、社会的な罰も受けないため、自暴自棄になっていた(アニキルート)

 

ということがあるとするならば、自暴自棄になっていた彼は、再びダヴィドによって助けられていた…

なんて考えるとロマンチックですよね。

 

 

映画『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』感想

前の連休最終日、いつもなら大河ドラマ観てるんですが、オリンピックの煽りを受けて放送休止中だったので思い切ってアマゾンプライムで

『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』を観ました。

 

 

うわ、今見たら吹替もあったのか。字幕が先に検索結果に載ってきたので字幕で観ました。

 

エマ・ストーンが出てるから見てみるかァ! みたいなノリで見始めたものの、

連休最終日の夜に相応しい、明日からも頑張ろうと思わせてくれる映画でした。

 

 

以下ネタバレ有りの感想。でもサクッとした感想です。

 

 

 

 

最初は四姉妹の立ち位置がわかりにくかったんですけど、前半終われば個性豊かな四姉妹の魅力にあてられちゃうので大丈夫。

 

南北戦争中の話となると去年読んだばかりの『風と共に去りぬ』が出てきますが、『風と共に去りぬ』が南軍の女性の話であることに対して、こちらは北軍の話。

 

 

 

(ちょっと話脱線しますが、『風と共に去りぬ(GWTW)』がマジで面白いです。

確かに長いんですけど、読むだけの価値があるし、何より作品にパワーがあるので、読ませてくれます。おすすめ)

 

『GWTW』の主人公スカーレット・オハラの「やあああったるぜええ!」精神に通じるものが作中にも流れていますが、こちらは勝利した北軍の話だけあって、同じ「女性の生き方とは?」というテーマであってもだいぶ静的。

 

この2作品の対比については先行研究がたくさんありそうなので、割愛。

 

四姉妹の過ごす子供時代が時の流れによって、どんどん変わっていく様がちょっともの悲しくもあるんですよね。

大人になれば一人の人間(女性)として自立しなければいけない、19世紀後半のアメリカではそれは「良き妻」になること他ないのだ…

という型にはめられた生き方を選択しなければならない時代。

 

四姉妹の歩き始めた方向が当然それぞれ違いますから、少しずつそれぞれの間に距離が空いていく…

兄弟姉妹に限らず、友達関係だってそうなんですが、常に関係というのは元の形を保てず、変化していくんだってのは当然わかってはいるものの、

 

「幸せだったあの頃」というブラックホールから抜け出せないことがあるってこともわかっています。

 

私も家族仲、兄弟姉妹仲が良いほうなので、この少しずつ幼いころから形が変わっていく寂しさよくわかります。

 

 

 

そんな中でも、姉妹にも新しい家族が増えて「新しい四姉妹と家族」が作られていく過程を見せてくれたのが良かったです。

 

なんか久しぶりに実家に戻って、またみんなでテーブルを囲んでやいのやいのやりたいなぁとなんだかしんみりしちゃいました。

 

今年のお盆は帰って家族や、昔馴染みにまた会いに行こうかなぁ。